第5章 瑟瑟と
男は鶴丸国永の言葉に耳を傾けながら、静かに苛立ちを募らせていた。
分かってる。そんなことは、分かっているのだ。
命を握られる怖さも、魂を預ける恐さも、ここにいる刀剣男士に会えなくなるかもしれないという不安も、ぜんぶ、ぜんぶ、分かっているのだ。
わかっていて、それでも鶴丸国永になならいいと思った。
全てを捧げて、その先にある人生が例え他人から見て薄暗いものだとしても、それでもいいと思えた。
分かっていないのは、お前の方じゃないか。
「主、真名を教えるということは、きみが思っているより危険なことなんだ。なあ、それが本当に分かって…」
「分かってる!」
鶴丸国永の言葉を遮って、男は苛立ちのままそう叫んだ。
「分かってるよ、真名を教えることがどれだけ危険かなんて、何を意味するかなんて」
「………」
「…分かってないのは、お前の方だろ」
男の言葉に、鶴丸国永は目を逸らした。
図星だ。今の男が何を考えているのか、鶴丸国永には検討がつかなかった。