第5章 瑟瑟と
「待って。今日は鶴丸にプレゼントがあるんだ」
「ぷれぜんと…?」
「うん。俺からお前に」
「きみから、か。それは楽しみだ。一体主は俺にどんな驚きをくれるんだ?」
鶴丸国永の言葉に、男はできるだけ自然を装って部屋に置かれている机の前に座った。
机の上に置かれてる紙と筆の使用許可をもらうと、男は震える手を叱咤して一度深呼吸をする。
その様子を、鶴丸国永は興味津々と見ていた。
…緊張していた。不安はないけど、楽観的にはなれない。
今から男が鶴丸国永に贈るものは、男の今後を左右するものだった。
どう使うかは鶴丸国永が決めればいい。
男はそれに一切口出しをしないし、反対も、否定の言葉も口にしない。
それは彼を信用しているから。信頼しているから。そしてなにより、愛しているから。
まだ僅かに震えが残る手で、筆を持つ。
筆先を紙に滑らせて、何度もなんども繰り返し書いてきた文字を連ねていく。
途中、筆に墨をつけようと硯の方へ筆を持っていけば、その手を鶴丸国永に掴まれた。
思いの外強い力に、半ば反射的に彼の方を見れば、彼の瞳は怒りにも似た情を湛えていた。
逸らしては負けだ、と、男は美しいきんいろに光る瞳を見つめる。