第4章 束の間の休息
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いよいよ前日。
大浴場で入浴を終え脱衣所へ上がると、脱衣所についてる洗面所には乱十四郎がいた。
男はさっさと着替え冷水機で水分を取ると、タオルで頭をがしがしと拭きながら乱十四郎のそばに寄った。
「乱まだここにいたのか」
「うん。主さんに髪の毛乾かして貰おうと思って、待ってたんだ」
言われてみれば、乱十四郎の髪はまだしっとりと濡れている。肩にかかっているタオルも、髪の毛の水分でところどころ色が変わっていた。
男は乱十四郎のおねだりに、彼の後ろに立ち肩にかかっているタオルをとった。
「乾かしてやるの、なんか久しぶりだな」
そう言いながら、男は手にしたタオルで乱十四郎の髪を挟んで水気を取る。この時タオルで擦ってしまうとキューティクルが落ちてしまうので、ポンポンと叩くようにするのがポイントだ。
水が滴ってこないくらいになると、使用済みのタオルは使用済み用のカゴへ。ドライヤーをコンセントに挿し、スイッチを入れた。
設定を熱風にして、掌に風を当てる。程よく温まれば、男は乱十四郎の髪に指をさして毛の根元からドライヤーを当てていく。
頭皮を爪で引っ掻いてしまわないように気をつけながら乾かしていれば、乱十四郎は気持ちよさそうに目を細めた。
ドライヤーの風の音に混じって、時折鼻歌が耳に届く。
穏やかな時間だ。優しい時間でもある。
ある程度乾いたところで、熱風から冷風へ切り替える。
仕上げとばかりにゆるい風で髪の毛を冷やしていれば、ぽつり、乱十四郎が呟いた。