第4章 束の間の休息
「君がそうやってる時は、不安なとき…かな」
「………何でもお見通しなわけだ」
「僕はこれでも君が好きなんだ。好きなひとを知りたいと思うのも、気にかけてしまうのもひとの心理だろう?」
ふふ、と妖艶な笑みを浮かべるにっかり青江に、男は柔らかな笑みを返した。
にっかり青江は、男にとってそっと寄り添っていてくれる存在だった。今だってそうだ。
彼は男のささくれたった心も、不安に揺れる心も、惑う心も、変わらない態度ですべてを受け入れてくれる。
その態度に救われている。支えられている。
彼がいなければ、きっと今の自分はなかった。
疑いも何もなく(或いはあったとしてもそれを微塵も感じさせず)最初から最後まで自分を信じてくれる存在。
「青江が俺を大切に思ってくれてることは、知ってるよ」
「言うようになったねぇ」
「もう短くはない付き合いだ。そのくらい」
男は最後の一口を味わいながら、煙草の火を消す。
不細工に縮まった煙草はそのまま灰皿に残した。