第4章 束の間の休息
「だぁって、主気配隠すの下手くそなんだもん。驚かせようとしてるのバレバレ」
はーぁ、とため息を吐く蛍丸に男が返す言葉を探していれば、蛍丸の後ろにはへし切長谷部が立っていた。
今度こそ蛍丸は後ろに立つ気配に気づいてないようで、へし切長谷部が振りかざした拳に男は思わず声を漏らした。
「あ、」
「え?」
蛍丸が男に反応するや否や、ついに拳は振り下ろされた。
ごつん、と。これまた何とも痛そうな音を伴って落とされた拳に、蛍丸が患部を抑えながら悶える。
「いったぁ…」
「蛍丸、主をそのように驚かしてもし万が一怪我でもなされたらどうする!」
「散々鶴丸にやられてるのに、俺が驚かしたくらいじゃ怪我なんてしないでしょ」
「だからと言って怪我しないとも限らないだろう」
どうやらへし切長谷部の主スイッチが入ってしまったようで、蛍丸は痛みからか涙目になったまま説教をうけている。少しかわいそうになって、男は間に入るようにへし切長谷部を宥めた。
「まぁまぁ、俺怪我してないわけだし、長谷部もその辺で。な?」
「……主がそうおっしゃるのなら」
しぶしぶと言った体のへし切長谷部に苦笑いを零しながら、男はふた振りに尋ねる。