第4章 束の間の休息
昼餉を挟んで、男が次に向かったのは庭にある畑だった。
そこでは今日の当番であるへし切長谷部と蛍丸が黙々と作業をこなしている。
男の存在にまだ気づいていない様子のふた振りに、男は閃いたとばかりに舌舐めずりした。
できるだけ気配を殺して、足音を立てぬように蛍丸の背に忍び寄る。
途中、パキリと枝のようなものを踏んだ音がしたが、よっぽど集中してるのか気づく様子は見られない。しめしめ。驚くがよい、蛍丸よ。
意気揚々と驚かせるべく、男は蛍丸の背に手を伸ばした。
さあ、あと少し。
というところで、男は思わぬ反撃を受ける。
「ばぁ」
「ひっ」
気づいていないとばかり思っていた蛍丸が、男が背に触れる直前で振り返ったのだ。
予期せぬ反撃に、男はびくぅと身体を跳ねさせ尻もちをついた。しかも何とも情けない悲鳴付きで。
「あははっ、主腰抜けたの?」
「おまっ、気づいてたのかよ」
これまた至極楽しそうに笑う蛍丸に、男は恥ずかしさやら驚きやらでどきどきと忙しない心臓に手を当てる。