第4章 束の間の休息
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「うぃーっす」
朝餉も終わり、各々が割り振れられた役割をこなしているこの時間。
男はそれ用の器具を手に馬小屋に現れた。
「主さん!」
突然の男の登場に、当番であった鯰尾藤四郎は嬉々として身を乗り出す。
その横でもう一人の当番である小夜左文字が、自分より大きな箒をもったまま男を見上げて問うた。
「どうかしたの?」
男はそんな小夜左文字の頭をくしゃりと撫でてやりながら答える。
「いやな、今出陣も演練もストップされてる状態だろ?書類も粗方まとめ終わったし、することもなくて暇だったんだ」
「だから俺らの手伝いしてくれるんですか?」
「おう。始め台所に手伝いにいったんだけどよ、歌仙に追い出されちまって」
「「あー…」」
「ん?なんだよ」
「なんでもないよ」
「うん、主さんは俺らと馬当番しときましょうねー」
主を台所に立たせるべからず。
どうも料理音痴の自覚が足りない男を誤魔化すように、ふた振りはせっせと馬当番を再開した。