第4章 束の間の休息
「言う気はない」
「…なら、なぜ僕たちには言ってくれたんだい?」
「分かってるだろ。お前たちは賛成もしなかったけど、反対もしなかった。だからだ」
「それは半分答えているけど、完璧な答えではないね」
「……俺の気持ちの問題。あとは、色々頼みたいと思って」
「そう。……きみは、ひどい人だ」
にっかり青江は納得したように力なく笑って、彼の手の甲をなぞった。
不思議そうに首をかしげる主は、きっとどれだけ残酷なことをしているのか気づいていない。苦しさと、けれど同時に、どうしようもないほどの歓喜も覚えている。
「なぁ、主さんよぉ」
「ん、?」
「それなら、なんで三日月のじいさんと乱のやつを呼んでやらなかっんだよ」
「あー…、それは、三日月には何となくだけど伝えてあるんだ。んで、……乱は、たぶん、泣くだろ。たぶん、っていうか、…うん。あいつはきっと、隠れて泣くんだ。だから、言わない」
「…あんた、ひどいな。乱は黙って行っても泣くぞ」
「うん、だから、その時は頼むよ」
嫌がる和泉守兼定に、男は困ったように笑って言った。
和泉守兼定は優しい刀であるから、そうすれば断れないのを知っていてそんな風に笑うのだ。