第4章 束の間の休息
膝に置いた拳を握りしめ、小さく息を吸う。
そして、口を開いた。
「三日後、俺は一人で阿津賀志山に行く」
その瞳はどこまでも真剣で、声は緊張でわずかに震えていた。
それでも、揺るぎない意志を感じる。
四口の胸にはそれぞれ複雑な気持ちが疼く。
そんな気はしていた。そういう人だと知っていたから。わかっていたから。
そんな主だから、惚れた自分たちなのだから。
それでも、やはり本人の口から聞くと鈍器で殴れたような衝撃が走る。
行くな。そんな言葉が出そうになって、それぞれが唇を噛み締めた。
胸の中で暴れる激情を何とか押さえ込んで、男に問いかける。
「……なぜ、三日後なんだ」
問うたのは大倶利伽羅だった。
分かった、の一言はまだ言えない。
「一つは準備を色々しておきたいからだな。もう一つは、自分のこころを整理しておきたい」
「…なるほどね。じゃあ、次は僕から質問いいかな」
「ああ」
「このことを他の刀に言う気は?」
にっかり青江の瞳がにぶく光る。
男は一瞬ひるみそうになって、自分を叱咤した。