第4章 束の間の休息
「あのな、主。俺たちだって可能性があるなら、そりゃあ行ってほしくはないがここまで反対しない」
鶴丸国永は男に近づき、その頬に優しく触れる。まるで慰めるような優しい愛撫だ。
そこに愛情を感じてしまって、男は反論する言葉を失った。
「…それは、五虎退が助かる可能性が、1パーセントも、0.1パーセントも、ないってこと?……助からないって、こと?」
沈んだ男の声に、鶴丸国永が優しく彼を抱きしめる。
ごめんな、でも、俺たちは何が何でもきみを失うわけにはいかないんだ。
心で呟きながら、とんとんと男の背をあやすように優しく叩いた。
「…主、もし仮にあいつらの言う通りに従ったとして、君はきっと殺されるだろう。殺されなかったとしても、無事ではいられないし、それこそ五虎退が君の眼の前で折られるかもしれない」
鶴丸国永が言う。
「例え俺たちと一緒に行ったとしても、示された条件と違う時点で斬られるでしょうね。俺たちだけ隠れて待機したって、向こうはある程度の範囲内なら俺たちの気配を探ることができるし、敵の届かない所へ行けば主を守れない」
鯰尾藤四郎が続けて言った。
「僕たちだけで行ければそれが一番いいだろうけど、さっきも言った通りまずあちら側が姿を現さない可能性が高い。というより、十中八九そうだろうね」
歌仙兼定が。
「……そもそも、まだ五虎退が折られていないかということも怪しい」
最後に、骨喰藤四郎がそう言った。
あらゆる方法が無理なのだと、可能性がないのだと説明され、男は鶴丸国永に抱かれたまま項垂れるしかなかった。
「分かってくれたか?」
鶴丸国永が申し訳なさそうに、少し傷ついた声音で問う。
男はそれに頷くことはなかった。
それでも、やっぱり俺は諦められないよ。