第4章 束の間の休息
落ち着け。まだ時間はある。俺にはこんなにも頼りになる仲間もいる。
男はゆっくり呼吸をしてから、もう一度口を開いた。
「とにかく、俺は五虎退を取り戻す方向でいく。作戦はこれから決めて…」
「だめです、主」
男の言葉を遮ったのは、他ならない五虎退の兄である一期一振であった。
「主、五虎退のことをそこまでして思って頂いているのは、私に取ってもあの子に取ってもこれ以上にない幸福です。でも、だめです。主が命をかける理由がない」
一期一振は、思いつめたようにそう言った。
彼だってかわいい弟を見捨てるのは心苦しい。状況を考えれば、心がきしりと何度も音を立て歪む。
けれど、己の主はそれ以上に大切だった。
比べるまでもなく、恐らく即答できる。無慈悲だとは思わない。それはここにいる刀剣男士皆がそうであるからだ。
だから、反対する。
一期一振にとって、いちばん失いたくないのは主であった。
「一期や、落ち着け。主を失わぬための俺たちだ。そのための作戦会議だ。違うか?」
三日月宗近の言葉に、一期一振が悔しそうに唇を噛み締める。
どんなことがあっても男を戦場に連れて行きたくない一期一振と、男の意見を尊重する三日月宗近。その差は過ごしてきた年月の違いによるものなのかもしれない。