第4章 束の間の休息
もっと、ちゃんと、自分にやさしくしてあげてよ。
音もなく、男は鶴丸国永にそう伝える。
慰めのキスを落とそうと背伸びして、しかしそれは目的の箇所から少しずれてしまった。
唇の端、かすれるだけのキス。
鶴丸国永は涙を拭って、それから小さくはにかんだ。
「へたくそ。ちゃんと口にしてくれ」
「うっせ」
照れ隠しで顔をふいと背ければ、憂いを取り払ったような鶴丸国永が男の頬を両手で挟む。
きんいろの瞳が濡れていて、その美しさに思わず息を飲んだ。
それを誤魔化すように、男は口を開く。
「つるの涙も、しょっぱいんだな…」
そういえば、彼はきょとんと不思議そうに首をかしげる。
「なんだ、きみ。俺の涙は甘いとでも思ってたのか?」
「…悪いかよ」
だってこんなに白くて美しくて、きんいろの瞳は砂糖をとろとろにして固めた鼈甲飴のようにあまいのだ。
涙だって甘いかもしれない、と思ったって不思議じゃない。
「ふははっ、きみは意外とロマンチストだよなぁ」
「つるだって、恥ずかしいことさらって言うくせに」
反論とばかり言い返せば、たっぷり優しさといとしさを滲ませた瞳が自分を見つめているのに気づいて、男は口を閉じ背伸びをする。
今度はちゃんと、くちびるに。