第4章 束の間の休息
突然掴まれた手と、穏やかではない男の表情に鶴丸国永がかすれた声で男を呼ぶ。
「つる、」
「な、なんだ?」
一瞬まよって、男は鶴丸国永の手をきゅっと握った。
薄暗いところで、尚きんいろに浮かぶ彼の瞳を見据えながら、男は言った。
「俺は、お前の心を守ってやりたいと思うよ」
切実に、まるで懇願するかのように。
「傲慢かもしんねぇけど、守られてばっかの俺が言えることじゃねぇかもしんねーけど」
その言葉は鶴丸国永に語りかける。
「……それでも、やっぱり、俺はお前の心を守りたいって、そう思うんだ」
男が言い終わるや否や、鶴丸国永は先の迷いなど振り切って、男の身体を掻き抱いた。
隙間なく、身体をこれでもかと密着させた抱擁は、息苦しさを感じる。ぎしり、と骨が軋む音が聞こえそうだ。
「………きみは格好いいな」
ぼそり、自嘲を含んだような声で鶴丸国永が呟いた。
「…やっと気づいたのかよ、ばーか」
「はは、すまんすまん」
「まぁ、格好いいっつってもみっちゃんには負けるけど」
「…きみ、本当光忠のこと好きだな」
先ほどとは打って変わって、鶴丸国永が拗ねたような口調で言う。
それがかわいくって、男は彼の首筋に甘えながらくすりとほくそ笑んだ。