第4章 束の間の休息
「………本当なら、ここで切腹するのが武士なのだと思います。責任を負うべく、刀を折るなり刀解していただくように申し出るのが、誇り高き者なのだと思います」
秋田藤四郎は、依然も頭を下げたまま涙ながらに言葉を紡ぐ。
「でも…っ、でもっ、ごめんなさい、僕は、主さまとこれからを生きていたい!」
涙を撒き散らしながら、秋田藤四郎が男を見つめてそう言った。
たまらず、男の瞳から涙がこぼれた。
安堵と、それから言葉にはできない喜びにも似た何か。
「だから、主さま。お願いです。僕を肌身離さず最低三日は持っていて欲しいんです。僕だって、主さまの霊力に触れていたい」
健気な願いだ。
健気で、純粋で、ひたすら前向きな願いだ。
生きたいと言った。
男とともにこれからを生きていたいと言った。
それは男が望んでいた一言だった。
たまらなくなって、男はその小さな身体をきつくきつく抱きしめた。
「わかった。…ありがとうな、秋田」
生きたいと思ってくれて。
自分とともにありたいと願ってくれて。
そんな意味を込めて、男は感謝を言葉にする。
すると秋田は嬉しそうな声で頷いて、男の背へと腕を回した。