第4章 束の間の休息
「あきた…?」
膝の上で握られた拳は力の入れすぎで白くなっており、嗚咽を漏らすまいと唇を噛み締める姿が痛ましい。
人の身を得てたったの数日で、嗚咽をこぼさないようするにはどうすればいいのか、その術を知っていることが悲しくてたまらなかった。
骨喰藤四郎が、秋田藤四郎のそばによりその背をゆっくりとなでてやる。
「ボクさえ…っ、ボクが、術さえかけられなかったら…!」
秋田藤四郎のまるで自身を断罪するような言葉に、男は息を呑む。
その小さな身体に、どれだけの後悔を抱えているのかと想像すると男の心臓がひしゃげるように痛んだ。
ちがう。秋田のせいなんかじゃない。
そう叫びだしたくなるのを堪えて、にっかり青江に説明を促す。
「…本人たちの口から聞いた方がいいんじゃない?」
「………僕がするよ」
にっかり青江の提案を受けたのは、燭台切光忠だった。
「…主、まず、いくら術にかかっていたとは言え、君に直接でないにしろ刀を向けたことを詫びたい。本当に、すまない。主に仕える身として、あるまじき行為だった」
彼はそう言って、男に頭を垂れた。
男はそれを気まずい思いで見つめながら、それでも真摯にその謝罪を受け入れる。