第4章 束の間の休息
「あと、……………」
言おうとして唇が戦慄く。
今その言葉を音にすれば、確実に震えるだろう。
どうしたのかと、心配するように幾らかの刀が男の方を見た。
男はその視線を全身に受けながら、昨日、つい十数時間前にあったことを頭の中で繰り返し思い出す。
そうして覚悟を決めたように顔を上げて、男にとっても受け入れ難い事実を口にした。
「あと、五虎退が……人質にとられた」
男が言葉を発して数秒、その場の空気は一瞬で警戒に包まれた。
殺気すらも感じる鋭い警戒の中、男は渇く舌で伝えなければならないことを伝える。
「昨日から数えて六日目…今日から五日後までに指定された条件で彼女らのもとに行かなければ、五虎退は折られる」
ごく、と誰かが唾を呑んだ音が聞こえる。
そこでようやく、堀川国広が口を開いた。
「その、条件って…?」
一気に男に意識と視線が突き刺さる。
男のこめかみに緊張で汗が流れた。
「阿津賀志山に、俺一人で来ること」
男が発した言葉に、空気がどよめく。
動揺を多く含んだそれを切り崩したのは、平野藤四郎の声だった。