第1章 契り
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夕餉前、男は小夜左文字と共に時空移転装置の前にいた。
時刻は酉の刻を半分ほど過ぎたくらいで、もうあと数分もすれば朝から出ていた第三部隊が遠征から帰ってくる。
外に出ていても漂ってくる夕餉の匂いに、男の腹の虫が鳴った。
「あーお腹減った。すんげーいい匂い。カレーかな?」
「…堀川が、今日は野菜カレーだって」
「おお!野菜カレー!いいな、絶対うまい」
「主はカレー好きだよね」
「だっておいしいし。……なあ、小夜」
ふたりで夕餉のメニューについて話していれば、男は突然声を潜めて隣にいる小夜左文字へと問いかけた。
「なんか、今日みんな変じゃないか?」
「へん?」
「うん…」
言いながら、今日の刀剣男士たちの様子を思い出す。
昼餉頃から腰の痛みが和らいだこともあって、彼らの前へと顔を出せば、何故か己を見る刀剣男士たちの多くが顔を赤くして気まずそうに目をそらすのだ。
挙句、一期一振や和泉守兼定、燭台切光忠なんかにはあからさまに避けられ、大倶利伽羅も男に近寄ろうとはしなかった。
何かしてしまっただろうかと考えても、思い当たる節はなく。
男はそのことに少なからずショックを受けていた。