第5章 友達以上は、何て言うの
違うかも、とも考えていたなんて
なんて馬鹿なんだろう。
自分のことは自分がよくわかってるでしょ。
渋谷さんが、いろんなこと経験してきているであろう渋谷さんが、
こんなお子ちゃま、相手にすると思う?しないでしょ。
自分でもわかってたんじゃないの。
友達。渋谷さんは友達。
この気持ちだって、自分だけの中に押し込めるって。
抑えるんだって決めてたじゃないの。
今のこの、関係を壊さないようにって。
だ、い、じょ、う、ぶ。
ゆっくり、
ゆっくりと深呼吸をした。
「、びっくり、しましたよ!いつもそうやってからかうんですから!」
少しでも誤魔化せるように、声を明るく意識した。
「セクハラ発言もするし!
一応これでも、年頃の女の子ですからね!?」
アハハと、笑う。
20歳前が年頃かどうかはわからないけど。
なんとか、誤魔化さなきゃ。
わたしは、あなたのことを、友達だと、思っています。
苦しい。
『…お、おん。そや、霄ちゃんの反応が面白くてついな!ヨコにも言われたし今度から気をつけるわ!』
「ほんとに気をつけてくださいね?まぁ、下ネタとかセクハラ発言も渋谷さんの個性というか一部というか、そんな感じですけどね」
プフっーと笑ってみる。
わたし、意外に頑張れるじゃない?
渋谷さんもハハッと笑いながら
『…ほな、また今度な』
と言う。
うん、いつも通り。
「はい、また今度!」
と私も返し、
電話を切った。
誤魔化せた。良かった。
きっとこれで、
また、
普通のお友達。
わたしがひとりで勝手に気まずくなっていただけ。
わたしの独りよがり。
きっと、渋谷さんにとったら、
沢山いる女友達のうちの1人。
若いお友達。
それだけの認識のはずだ。
恥ずかしいなあ、と
涙が出たのも、
わたしだけの秘密。