第4章 お友達って、
…いちいちそんな優しい顔で笑わないでください、渋谷さん。
自分の気持ちに気づかないようにするの、大変なんですよ?
気づいてて気づかないふりってこんなにもつらいんだなぁ。
「あ!もう出ないとです!」
「ん?おぉ、もうそないな時間か」
「ごめんなさい、行きますね!」
玄関に向かっていくと後ろから渋谷さんがペタペタとついてくる音がする。
(お見送りしてくれるんだ)
靴を履き、振り返る。
「渋谷さん、ご迷惑おかけしました!とても助かりました、ありがとうございます」
ペコッと頭を下げた、
瞬間
わたしの背にある玄関の扉に
バンッと音が響く。
……え?
渋谷さんの、顔が、近い
「忘れとるかもしらんからもっぺん言うとくな?」
「霄ちゃん、他の男の家、泊まったらあかんで?」
そこで、渋谷さんは扉についていた手を下ろし、離れる。
「っ…!」
か、壁ドン、されてた…!
「あ、服、返すのいつでもええから」
にへらっと柔らかく笑い手を振る渋谷さん。
わたしは顔に熱がかなりのスピードで集まってくるのを感じつつ、
「ちゃ、ちゃんと洗濯してから返しに来ます!」
と大慌てで言って一礼して飛び出た_______
「ほんま、かわええ反応するなぁ」
着せられてる感すごいのもかわえかったし。
友達になってから、ずっと某連絡アプリで喋ったり、宅配に来てもらった時に喋っている。
友達だと、思っている。
けど、最近変だ。
霄ちゃんがバイト先の野郎の話をした時とか、
なんやモヤッとしたものがある。
これは、自分の友達がとられたっていう感覚なのか、それとも別の……
「あかん」
まだ、
まだこの先のことを考えてはいけない。
……ましてや、昨日の霄ちゃんのことを思い出してはいけない。
「お友達言うたんは俺なんやで…」
わかってる。
歳があいとるから、
やから、
友達を奪られたような、妹を奪られたような、
娘を、奪られたような…
そこまで考えてしまったところで、今までに感じたことのないようなモヤモヤ感が、
俺の中で生まれた。