第7章 隠しきれない。
「奢るとかなんか。したいように。」
「…寝てる時?」
「おん。俺の膝で寝てる時。」
にやりと言う。
っ!
「や、ほんとにそれは申し訳なかったです…!でも寝てる時って…ずるくないです?」
覚えてるわけなくない??
「当てさせる気、あらへんから当たり前やん」
「えっ?!ええええ??」
余計ずるい!!
ふはっ、とまたすばるさんが笑う。
「うーーーーん…どういう系のこと言ったんですか??悪口とか??」
「悪口言うわけないやん。」
あっ!霄ちゃん、寝るんやから飲む時は気ィつけや!という話をしているところで、家に着いてしまった。
「…今日はありがとうございました。あと…寝ちゃってごめんなさい」
ぺこ、と頭を下げる。
感謝と謝罪を込めて。
「ええねん。充分楽しかったで」
「あ、あとネックレス!いつも着けますね!」
迷惑だと思いながらも、少しでも一緒にいたくて、何かないかと話題を探してしまう。
「おん」
短く言って頷くすばるさん。
寒そう
そんな寒そうにしてるのを見ると、やはり早く、もう別れなきゃ、すばるさんを帰してあげなきゃ、と思う。
「じ、じゃあ、」
「おん。ほな、また」
『また』
その言葉が何とも嬉しい。
くるり、と方向を変えたすばるさんの後ろ姿に気づく。
そうだ、
「すばるさん!」
歩き出したすばるさんを呼び止めて駆け寄る。
「ん?」と振り返ったすばるさんに、使っていたマフラーをかけ、ゆるりと巻く。
目を丸く見開いて、びっくりしているすばるさん。
「これ、使ってください」
少しくらいはあったかくなるはず。
一瞬、面食らった顔をして、すばるさんは笑う。
「ありがとう」
いつもの訛りで言う。
わたしの、大好きな訛りで。
「でもいつになるかわからんで?返すん。」
ツアーもあるし、と言う。
じゃあ
「じゃあ、返してくれるのは、わたしが当てれたら、で!」
「余計、いつになるかわからんやん」
目を細めて笑う。
「意外に早いかもしれないですよ?」
「…楽しみにしとるわ」
そう笑って、ほな、と手を振ってまた歩き出す。
わたしも手を振り返して、すばるさんが歩いていった方向を見ていた________