第7章 隠しきれない。
うぅ…
「な、んでもない、です…!」
誤魔化そうにも何も言えなかった。
すばるさんも不思議そうな顔をする。
と、
「あっ、ここですよ」
お店までの通り道にある、バス停を指す。
「、何が?」
「男の人に声かけられたの。」
2回とも、ここで声をかけられた。
「…そうやったんや…」
つい、言っちゃったけど…すばるさんが悲しそうな顔をする。
「ふふっ…貴重な経験ができましたよ?ありがとうございます」
わざとらしく、ぺこりと頭を下げると、すばるさんの顔に笑顔が戻る。
「ほんま、かなわんわぁ」
目的のお店に着き、中へ入ると
「予約してた渋谷です」と言う。
…なんか…こういうの、良いなぁ…
ただの、友達だけど…それ以上の関係に思えてしまう。
…上手く言えないけど。
「あぁ、渋谷様ですねー」と言った女将さんと目が合う。
女将さんが「あっ」という顔をする。
「お久しぶりです」と言うと、女将さんも「お久しぶりです〜」とにこやかに返してくれる。
「??どういうこと」
「こっちに引っ越してきてから、祝い事とか記念日とかでよくこのお店に来てるんですよ〜。最近は回数減っちゃったけど…。」
居酒屋ではあるけど、未成年でも普通に過ごせるくらいアットホームで、女将さんたちもフレンドリー。
「ほーん…せやったんや…」
すばるさんが優しい顔でお店を見渡す。
女将さんがササッと横に来て耳打ちをする。
「彼氏さん?」
「!!?」
バッと女将さんを見ると、ニヤニヤとしている。
「ちっ、違いますよ!」
「なぁーんだ〜ついにかって思ったのに〜
で、今日は??」
「ついにって…
今日は、誕生日なんです」
「あら!何歳?」
「これで20ですよ」
と、これみよがしにすばるさんが横から言う。
女将さんも一瞬すばるさんのほうを見て、視線をわたしに戻すと、
「あらぁ…もうあれからそんなに経つのねぇ〜」
「そうですねぇ…最初来たの、小学3年生でしたからねぇ…」
「ほんとよぉ〜、あっ、席、そっちのテーブルね!」
予約席の立て札がある座敷に向かう。