第3章 大倶利伽羅夢01
これは一体どういうことなんだろうと自分の置かれている状況について考えてみる。
場所は本丸の広間近くの廊下、目の前には大倶利伽羅、私の後ろには壁、両横には大倶利伽羅の腕……つまりこれは百何十年か前に流行ったと聞いたことのある壁ドンとか言うやつだ。
キュンとくるシチュエーションだとかって紹介されてた気がするけどそんなの嘘だ、めちゃくちゃ怖いじゃないか、威圧感半端ないよ、何なの、相手が悪いの?!
大混乱な私の頭の中。
だって大倶利伽羅にこんなことをされる理由が思いつかない。
まだ光忠さんとか青江さん辺りならやりそうだなとか思うけど、大倶利伽羅とはこんなことをされる程距離を縮められてないというか私は縮めたいのに大倶利伽羅が慣れ合わないって言って縮めさせてくれなかったし…!
「あ、あの、大倶利伽羅?ど、どうしたの?」
いつも通りの仏頂面のまま動かず、私をじっと見るだけで喋らずにいた大倶利伽羅にとりあえずそんな風に尋ねてみる。
大倶利伽羅は少し眉間に皺を寄せて…口を開いた。
「………俺は誰とも慣れ合うつもりはない。」
これは初めて会った時から何度も何度も何度も…耳にタコが出来そうなくらい聞いている言葉だ。
でも折角知り合えたのにそんなのつまらないと私は大倶利伽羅をよく構ってて。
あれかな、構うのをいい加減にしろって言われるのかなーウザいとか言われたら流石にヘコむなーと思いながら大倶利伽羅の言葉を待つ。
「………………なのに…あんたが、近くにいないと落ち着かない。あんたが他の奴と楽しそうに笑っていると気分が悪くなる。…戦場でいつ死んだって構わないと思っていたのに、ここに帰って来たいと、あんたと少しでも長くいたいと思うようになってしまった…全部あんたの、せいだ。」
…………ん?
んん?
待って、それってつまり私を……と聞こうと思ったのに、突然あごを掴まれて上を向かされたと思ったら大倶利伽羅の整った顔が目の前にきていて……柔らかいものが私の唇にぶつかるように当たってきた。
「ん…っ!?」
流れでそれが大倶利伽羅の唇だと分かったけど、さっきまでよりも大混乱な私は固まったまま。
「柚希……。」
初めて名前も呼ばれた…!
何なのこれ、何が起こってるのと思っていたらもう一度大倶利伽羅に口付けられて、ああもう頭がパンク寸前だ。