第2章 小狐丸夢01
「どうしたの?」
「ぬしさま、小狐の毛並みを整えてくださるのはまた今度で結構です。今日は小狐にぬしさまの髪を梳かせていただけますか?」
「えっ、小狐丸が梳いてくれるの?」
「はい!ささ、後ろを向いてください。」
楽しそうな小狐丸に櫛を取られ、勢いに押されるまま後ろを向く。
「では、失礼いたします。」
小狐丸が私の髪に触れ、櫛を通したのが分かった。
……何だか凄く、緊張する。
何でだろう、ただ髪を梳いてもらってるだけなのにと思っていたら小狐丸が口を開いた。
「ぬしさま、ぬしさまはご自分の髪があまり好きでは無いようでしたが…小狐は好ましいと思っておりますよ。芯が強く、真っ直ぐで……ぬしさまらしい。」
「っ、わ、私はそんなんじゃ、ないよ……」
「ありますよ。小狐は……そんな柚希さまが愛おしいのですから。」
2人きりの時でもたまにしか呼んでくれない名前で突然呼ばれて思わず振り返ると、私の髪を一房手に取っていた小狐丸と目が合った。
にんまりといった風な笑顔を浮かべた小狐丸は私と目を合わせたまま髪に口付ける。
ひどく顔が熱くなったのが分かった。
「…小狐丸、ずるい。」
私が言うと小狐丸はふふふ、と笑って顔を近付けて来た。
「狐ですから。…柚希さま、本日はゆっくりいたしませぬか?小狐は柚希さまに沢山構って頂きとうございます。」
駄目でしょうか?と小首を傾げて聞く姿は可愛くて…小狐丸には勝てないなと思いながら自分のおでこを小狐丸のおでこにくっつけた。
「…明日、書類整理手伝ってね。」
「勿論。……では、存分に構ってくださいませ、ぬしさま♪」