第2章 小狐丸夢01
「ぬしさま、小狐です。入ってもよろしいでしょうか?」
「良いよ、どうぞ。」
スッと襖が開いて入って来た小狐丸は満面の笑み。
手に持っているのは…初めて2人で万屋に行った時に私が買ってあげた櫛。
「ぬしさま、また毛を梳いていただけませぬか?」
チラリと机の上の書類を見て……まぁ、このくらいの量なら今やらなくても期限までに何とかなるかなと考えて小狐丸に手招きした。
「うん、じゃあこっち来て。」
「はい!」
いそいそと嬉しそうに私の前に座った小狐丸に小さく笑いが漏れる。
背が高くて冷たそうな雰囲気に見えるのに、本当は凄く可愛いよなーと思いながら小狐丸から櫛を受け取って、結んであった彼の髪をほどいた。
それからそっと櫛を小狐丸の髪に通す。
引っかかることなくするりと櫛が通る髪につい、ため息が漏れた。
「ぬしさま?溜息とは如何なされたのです?」
「え?あぁ、小狐丸の髪は艶もあるし、触り心地も良いし、さらさらで羨ましいなぁって思ったの。私は…毛質が固いから。」
私がそう言うと、小狐丸はふむ、と考える素振りをしてからくるりと体ごと振り返った。