第6章 清光夢01
「ねぇ、慣れてる感じするけど前はマニキュアとかしてたの?」
「してたよー。でも今は忙しいし、誰に見せるって訳でも無いからね。」
「ふーん……塗れば良いのに。さっき似合わないって言ってたけど、綺麗な手してるんだからこういう赤も似合うと思うよ?」
「いやいや、清光のが似合うよ。…正直渡された時に清光の色だなぁって思ったから受け取っちゃったとこあるし。」
「…何で俺の色だなぁで受け取ったの?」
「あげたら喜んでくれるかなって。……実際は何か複雑そうな顔されてあれーって感じだったけど。」
俺の心の内は柚希さんにしっかりバレてたらしい。
自分でもそんな顔をしちゃった理由はよく分かってないから、言葉に詰まる。
「嬉しくなかった?」
「そんなこと、ないよ。こうやって手かけて貰えるのも嬉しいし。」
「ほんとに?あんまり嬉しそうに見えないけど?」
「それは、それは…………何でなんだろ…。」
柚希さんに手を取られてドキッとしたり、贈り物にモヤッとしたり、贈った相手が女の人でホッとしたり。
人の体になってから、付喪神だった頃と違って俺は感情ってものに振り回されてる。
それを悩んでいると、柚希さんがちょっと悪い顔で笑った。
「あ、もしかして…くれた人が男の人だって勘違いして、ヤキモチ妬いちゃったとか?清光ったらそんなに私のこと好きだったの?」
『好き』
柚希さんはからかったつもりだったんだと思うけど、俺はその言葉にびくりと大きく体を弾ませてしまった。
……あぁ、そうだったんだ、俺は柚希さんが好きなんだ。
これが、好きっていうことなんだ。
分かってしまったら顔が一気に熱くなって、心臓がバクバクやばいくらいに音を立てて……。
そんな俺の反応に柚希さんは驚いたように目を見開いていた。
「え、清光…その反応って、」
「っ!!つ、爪ありがと!も、もう部屋戻るから、俺!」
柚希さんの手の平の上に乗せていた手をさっと引いて立ち上がり何か言われる前にって思って部屋の外に駆け出した。
名前を呼ばれたけど、今は振り返れない。
あぁもう、これからどうしたら良いんだよ!