第5章 一期一振夢01
「いち兄、遊ぼうぜー!」
「いち兄〜、虎くん達が木から降りれなくなっちゃいましたぁ…!!」
「いち兄、一緒におやつを食べませんか?」
「なぁいち兄ー、俺の眼鏡知らねぇか?」
「ねぇねぇいち兄、ボクの髪結んで?」
一期さんの元にはこんな風に毎日粟田口の子達が集まってくる。
彼は近侍として私のそばにいてくれることが多いから必然的にそんな様子を見ることが多くて………だからつい、自然と口から出てしまったんだ。
「すみません。いち兄、この間の遠征のことで…………あ」
いつも笑顔で落ち着いている一期さんが驚いたように目を丸くして私を見ていて、思わず慌てる。
「や、あの、その、ほ、ほらっ、最近粟田口の子達といる機会が多くなったのでうつっちゃったみたいで…!!」
呼んだことのない呼び方をしたせいで、恥ずかしくて顔がひどく熱い。
そんな私を見て……一期さんは面白そうにふっと吹き出した。
「い、一期さん、笑わないでくださいよ…!」
「す、すみません、しかし、そこまで慌てずとも良いのにと思いましたらつい………ふふっ」
「うぅ………。」
「すみません………あの、本当にお気になさらずに。ただ…貴女にそう呼ばれるのは少し、困りますな。」
「…困る?どうしてですか?」
私の問いに一期さんは辺りを見回してから体を屈め、私の耳元で理由を告げた。
「……柚希様の兄ですと、こうして恋慕の情を抱き恋仲でいることは許されないでしょう?」
だから、困ります。
そう、低い声で囁いた一期さんは私の耳に口付けてからとても色っぽい笑みで私を見つめた。
「い、いいい一期さん…!!」
恋人同士になってまだ日が浅く、一期さんのこういう行動に慣れていないせいでとても慌ててしまった私に一期さんは楽しそうに笑う。
「…ふふ、本当に柚希様は可愛らしい方ですな。」
「そ、そんな…って、そ、そうじゃなくて…!こんな廊下で耳に、」
「大丈夫、誰もおりませんから。……それとも、2人きりになれる場所へ行きますか…?」
「い、一期さん………もう、ほんと、私の心臓が持たないので、」
本当にクラクラして倒れそうだ。
心臓がおかしいくらいドキドキしてる。