第1章 出会い
「ただいま」
「あら、周助お帰り。今日は私のオトモダチが来てるのよ」
「友達? へえ、そうなんだ」
部屋につき荷物を整理していると、玄関に誰か来たらしい、姉さんとの会話が聞こえた。
周助、ということは、私と同い年の男の子の方だ。
「可愛い子よ。ねえルネ、ちょっと顔見せてよ」
「あ、うん!」
私は荷物をその場に置き、階段を下りる。
玄関に着くと、一人の男子が立っていた。
「初めまして、不二周助です。もしかして・・・ハーフ?」
「え・・・あ、いえ、クォーターです・・・」
姉さんのように笑顔が第一印象の優しそうな人。
柔らかな声音は幼さを感じさせるが、身長は私よりも10センチメートルくらいは高かった。
彼は私の言葉を聞くと、少しだけ眉を寄せてこう言った。
「あ~残念、ちょっと惜しかったな。どこの国の間?」
「親はフランスです。父方のお母さんが日本人で・・・」
「美人なのは親譲りかな。姉共々よろしくお願いします」
「あ、いいえ。こちらこそ・・・!!」
私は慌てて頭を下げる。
なんだか、この人といると緊張する。
ニコニコ笑顔なのは、時には安心できるけれど、時には怖いくらい表情が読めない。
ちょっと・・・怖いくらいだよ・・・
私はそれを悟らせぬように、もう部屋に戻ろうかと後ろ向きで1歩下がった時だった。
「周助、ルネ、お母さんがご飯だって」
「あ、うん。すぐ行くよ」
「はい・・・」
隣の部屋から姉さんが顔を出して言った。
周助君は私の隣を通り過ぎて部屋に向かう。
この時間に帰ってくるということは、おそらく部活だろう。
持っていた大きなバッグには見覚えがある。
確か、テニス用のラケットを入れるものだったと思う。
「テニス部・・・」
彼のテニスをする姿を見たい。
周助君と私は同い年。
今、フランスの学校では長期休暇。
・・・父さんに連絡して学校を変えてもらおうかな。
同じ学校なら、彼がテニスをする姿を見れる。
そしたら、周助君と同じクラスになれるかもしれない。
見たい。
彼の運動する姿を。
彼が笑顔を崩して戦っている姿を!