第4章 作られていく日常
「おはよう不二くんっ!」
「ああ、おはよう」
ルリちゃんの挨拶に周助君はニコニコしながら答えた。
ルリちゃんはどうやら周助君のファンのようだ。
周助君は席に向かうとき、ちらりと私の方を見た・・・気がする。
(私も挨拶すればよかったかな?)
でも、今更遅い挨拶をしてもしょうがないなと思ったのでやめた。
ルリちゃんは周助君と挨拶できたことに喜んでいて、キャーキャー言っている。
まるでジョニー・デップにハグしてもらった人のような反応だった。
「今日は帰り手塚君一緒じゃないんだ・・・」
「いつも一緒ってわけにゃいかないら。あー私このクラスでホント幸せ♪」
ルリちゃんのはしゃぎようには少し驚いてしまう。
普通の中学の、テニスが少しうまいだけの人にここまでアイドル相手のような反応を見せるのは変じゃないか?
私は周助君を見た。
彼は大人しい性格なようで、お互いを小突きあうような男子とは積極的に絡もうとはしていない。
特定の話す人は決まってないようだった。
今は同じテニス部の川村君という人と話している。
そういえば、ケンカやもめごとは嫌いですといった顔をしているのに、テニスではあんなに体を動かして頑張っていて・・・
いや、テニスではあれが普通なのかな?
もう、混乱してしまいそうだ。
・・・そのとき、周助君が振り向いて目が合った。
「・・・ッ・・・」
慌てて目をそらす。
(・・・って、何そらしてんのよ。不快な思いさせちゃうじゃん)
思い直してみると、彼はもう前を向いていた。
・・・気にしてないだろうか?
(ま、いいや。帰ったらまた話すし・・・)
私はそう思って今日も一日授業を真面目に受けた。