第4章 作られていく日常
「ただいま」
「ただいま・・・です?」
「普通にただいまでいいじゃん」
周助君は、やっとくすっと笑ってくれた。
そう、私たちは今不二家にやってきたわけだが、二人で帰っている間、ずっと沈黙状態が続いて気まずかったのだ…。
「おかえり~っ!! どうだった?」
姉さんが出てきて、私に抱き付いてきた。
今日の学校でのことを聞いているのだろうと理解した私は、苦しい肺に何とか酸素を入れて話した。
「みんないい人たちだった……ッ」
「そっかあ~・・・男子には何も言われなかった? 言葉だけでももうセクハラなんだから」
「何も言われ・・・無かったッ」
「・・・姉さん、離してあげて。苦しそう」
周助君の言葉で何とか離れた姉さんは、離れた瞬間に涙目になってしまう。
「あなたがいなくて本当に寂しかったわ~もう帰らずに、この家の住人になってよ~」
「さすがに・・・」
それは無理だよ、と言おうとしたら、隣の周助君が目に入った。
(いつまで・・・だろう)
学校に行くのは彼の他の表情が見たいだけだ。
しかし、それを達成したら?
日本で面白いことを見つけたら、私は迷わずにそれにのめりこむだろう。
しかし、もし面白いことを見つけられなかったら?
私は・・・日本を出て行くだろうか?
今は大歓迎されて、ここが心地いい。
だが、いつかは飽きてしまうのだろう。
それはいつだろう・・・
「ルネ?」
姉さんが黙ってしまった私の顔を心配そうにのぞき込む。
「あ・・・ご飯まだ?」
「それならすぐに食べられるわ! 早く鞄部屋に置いてきてね♪」
姉さんはリビングに戻っていく。
無理矢理に話を変えたけれど・・・ま、気にしないよね
ふう、とため息をついて部屋に戻っていく私を、周助君が見つめていたのには気づかなかったが・・・