アイドル☆キュンキュン【Mr.FULLSWING】
第1章 嫉妬
「お疲れ様っすー。」
「おう、お疲れ。」
ガチャッと少し立て付けの悪い部室のドアを開ける。
「きゃー!犬飼キューン!」
「うわぁ!?」
部室を出ると、目の前に女性の人だかりが出来ていた。
「犬飼キューン!今日こそ一緒に帰りましょうー!?」
どうやら先に部室を出た犬飼キュ・・・犬飼君が親衛隊に捕まったらしい。
すっかり大人しくなった犬飼君が円の中であたふたしていた。
不謹慎だけれど、少し面白い光景だった。
「あ、忠之介。」
○○さんが円の中からひょっこり顔を出した。
途端に僕の胸がチクリと痛む。
「一緒に帰ろうか。」
「・・・犬飼君はいいんすか?」
「うん。あたしは親衛隊でも下っ端だしね。」
つまり僕のことを待っていてくれたわけじゃないっすね。
愛しの犬飼キュンと一緒に帰れないから僕と帰ると。
「別に僕のことなんて気遣わなくていいっすよ。」
○○さんは本当に僕のことが好きなんすかね?
好きだとしても、もっと僕の気持ちを考えてほしいっす。
僕は踵を返して校門に向かった。
「あっ!待ってよ忠之介!」
○○さんが走って僕の隣に並ぶけれど、僕は○○さんの顔を見れなかった。