アイドル☆キュンキュン【Mr.FULLSWING】
第2章 翌日
体育館裏にはすでに○○さんがいて、僕達に気付くと階段から腰を上げた。
「急にごめんなさい。」
○○さんはどちらかというと犬飼君に向かって頭を下げた。
「子津の彼女・・・だよな?なんだ?」
犬飼君、知ってたんすね。
ちょっと意外に思いながら僕は事の成り行きを見守る事に徹した。
「実はちょっと痴話喧嘩してね。」
「はぁ?」
「あたしが犬飼キュンを地獄の底まで追っかけ隊に入ってることで喧嘩したの。」
「・・・あぁ。」
何となく察したらしい犬飼君は「痴話喧嘩に俺を巻き込むなよブッコロ」と言わんばかりの顔で僕を見る。
僕は肩身の狭い思いで頭を下げるしか無かった。
「それでここははっきりさせた方がいいと思って。」
・・・はっきりさせる?
○○さんはそう言うと僕の腕に抱きついて犬飼君と向き合った。
「犬飼キュンのことが好きです!でも!忠之介のことはもーっと好きです!愛してます!」
グラウンドの方にまで聞こえるんじゃないかと思うような力強い声。
犬飼君と僕は放心状態。
○○さんは少し頬を赤らめると、満足!と言わんばかりに胸を張った。
「言いたかったのはそれだけ!2人とも部活頑張ってください!」
○○さんは僕の腕を離れると、階段に置いてあったカバンを引っ掴んで走り去ってしまった。
じわじわと僕の頭は状況を整理し始める。
・・・あんな大声で、人前で恥ずかしいっす。
でも嬉しいもんっすね。
僕はようやく○○さんの愛を心から信用した。