第1章 〜人形のような少女〜
その頃テニスコートでは。
「あーあ、跡部あんな言い方しなくたって」
菊丸の言葉に、溜息で返す跡部。
「菊丸。お前が下手に絡むからやろ」
忍足が菊丸に呆れ交じりに告げる。
「え〜俺が悪いの?」
「…、困ってたっすから」
しらっと答える越前に、菊丸が目を丸くする。
「おチビ!何時から呼び捨て?!」
「…あぁ、よく考えたらクラス一緒だったっす」
「えぇ?!おチビ、ズルい!」
「確かに、有利やな、それ。ズルいわ」
「何がっすか」
ズルいズルいと連呼する菊丸と忍足に、越前はきょとんと目を瞬かせる。
テニス一筋の男が、恋愛感情に気付くには、大分時間を要しそうだ。
その事実に気付いた先輩達はにやりと笑う。
掠めとるなら今のうちだと。