第1章 〜人形のような少女〜
竜崎先生に言われるまま、ドリンク作りやタオルの準備、球拾い等をこなしつつ、何かと話しかけてくる跡部や丸井、菊丸に仁王、桐原の対応をそつなくこなし、部活終わり。
寮へ戻ろうとすると、一年のはずの越前が追い付いてきた。
レギュラーは後片付け免除なんだろうか。
「家、どっち?」
「寮だよ」
「ふぅん、家、遠いの?」
家。
私を人形としか見てない嫌な場所…だった。
でも。
もう誰もいない。
残ったのは、莫大な財産と、大きすぎる家だけ。
「まぁ…遠いかも…」
「…?そうなんだ」
ちょっと、濁しすぎたかな。
違和感感じたみたい。
「越前君は?」
「あれ、俺名乗ったっけ」
不思議そうに此方を見遣る彼はまだ、あどけなさが残っていて可愛らしいと思う。
「マネージャーになるんだから、強い人の名前ぐらい、調べてるよ」
「ふぅん、勤勉。あ、俺こっち」
「うん、じゃあね」
片手を上げて去っていく彼を少しだけ見送って、寮へ向かった。
とは言っても、それも勉強して寝るだけの場所なのだけれど。
テニスが無くなった私の生活は、余りにも…つまらない。