第1章 〜人形のような少女〜
「おや、知らんのかい、この子。去年の青学女子テニスシングルス個人戦世界大会優勝者のだよ」
「「「「「はああぁああ?!」」」」」
「シングルス個人戦で…」
「世界大会優勝?!」
「えっと…まぁ、はい」
いきなりどアップに迫った顔にたじろぎつつ、頷く。
それと同時に、嫌な予感に駆られる。
「俺がやる」
「いや、俺が」
「…あのマネージャーに決めて貰えば良いんじゃないっすか」
後ろで言い合っているのは跡部に菊丸、そして越前。
「やんないよ?」
「なんで」
食い下がる越前に、はしれっと答える。
「パワー勝負じゃ敵わないもの」
「そりゃそうさ。世界王者でも女の子だ。ほらほら、さっさと練習を始めな」
竜崎がパンパンと手を打って、皆を散らせる。
皆、反応の薄い女だと思った。
本当に綺麗な人形の様に、感情の起伏が見えない奴だと。
けれど、練習が始まって、彼等の打ち合いを見るの目はきらきらと輝いていて。
その場にいた男全員の目が釘付けになった。
それ程に、美しかったのだ。
微笑を浮かべ、テニスを眺めるそのマネージャーは。