第2章 〜Rute 越前リョーマ〜
そして夕刻。
太陽が真っ赤に染まりかけた頃。
「そろそろ帰る?」
「そうだね、課題出てたはずだし」
「ちぇっ…何の教科だった?」
「日本史と数学Ⅰだったかな」
「選りに選って…はぁ」
憂鬱そうに溜息を吐くリョーマに、やなこと言ったかなと少し罪悪感を感じる。
「苦手なの?」
「日本史がね。帰国子女にはキツいよ」
「教えてあげようか?」
「本当?」
「うん」
ふわりと微笑むと、軽く頬を染めてそっぽを向くリョーマ。
「リョーマ、耳赤いよ?」
「…別に」
ふいと顔を逸らして、ラケットをバッグに仕舞う彼。
そう言えば私が使っていたのもリョーマのラケットだったと思い出し、彼に返す。
「貸してくれてありがと」
「良いよ。俺が言い出したんだし」
バッグを背負い、私の買い物した荷物も黙って持ってくれる彼はやっぱり優しい。
「うち、来る?」
「え?」
「教えてくれるんでしょ」
「あ、うん!」
先を歩くリョーマを追い掛ける。
その後ろで。
「負けた…だーね…テニスプレイヤーとしても男としても…」
「完敗ですね…越前、リョーマ…」
「…余り言うと惨めになるよ?」
ずんと落ち込む三人の聖ルドルフテニス部がいた。