第1章 〜人形のような少女〜
「どうした、」
手を付けない私を不思議に思ったのか、跡部先輩がこちらに視線を向ける。
というか、いつから呼び捨てされてるんだろ、私。
「少し、量が多くて…食べられないです」
「あーん?俺様はお前の分は少なめにしろっつったぜ?おい樺地、店員呼べ」
「跡部先輩?!私普通より少食だから。お店の人が悪いんじゃないですよ」
そっか、あれで少なめだったのか。
怖いね、外食。
余り外で食べないのはそういうのもあったりする。
食堂のお兄さんは、私の食べられる量把握してくれてるから、残さずに済むんだけど。
「お前が良いっていうなら良いけどよ」
一転して優雅に紅茶を飲む跡部先輩。
美形だから絵になってるけど。
忍足先輩も向日先輩も。
「じゃ、デザート俺貰っていい?」
「どうぞ」
甘いものが好きなのか、お皿を手渡すと向日先輩は嬉しそうに笑った。
「行儀悪いで、岳人」
「いいじゃん。食べられないっていうんだし」
忍足先輩にそう返事をしながら、ぱくぱくとケーキを食べる向日先輩。
エネルギー消費の激しいプレイをするから、カロリーが必要なのかな。
なんて、紅茶を飲みながら考えてみる。
テニス界での彼らの今までの経歴は、大体把握してる。
ある筋から映像を入手して、個人の得意技は調査済み。
ついでに弱点も。
まぁ…敵になるわけじゃないし、意味ないんだけど。