• テキストサイズ

〜浮雲〜《テニスの王子様》

第1章 〜人形のような少女〜



校門前にリムジンが迎えに来て、一目で高級とわかるレストランに連れて行かれた。

腐っても財閥の娘だったから、動揺はしないけれど。

派手なのはあまり好きじゃないから、こういうところは余り来た記憶がない。

でも流石にテーブルマナーぐらいは覚えていたみたい。

私の食べ方を見ていた跡部先輩が、対面でにやりと笑う。


「お前、庶民じゃないな」


「…まぁ」


「何処のお嬢様だ?」


「。私の苗字です」


答えると、ハッとしたように跡部先輩が目を見開いた。


「成る程な。災難だったなぁ」


「別に…」


余りこの会話はしたくない。

同情なんて要らないし、特に悲観してる訳でもない。

寧ろ枷が外れて身が軽くなった。

私の優秀さと見た目にしか興味が無かった両親は、私の言葉を聞いてくれたことなんて無かったから。


「悪いな、飯が不味くなったか?」


普通に謝罪されて、きょとんと目を瞬かせる。


「…跡部先輩って謝れたんですね」


「てめぇ…」


「確かに跡部が人に謝っとるんなんか、初めて聞いたわ」


「珍しい事もあるもんだな」


うんうんと同意する忍足先輩と向日先輩。

跡部先輩はフォークを握りしめて怒りに耐えている。


「…すみません、美味しいですよ、此処のお料理」


このままじゃ机をひっくり返しかねないと、慌ててフォローに回ると、大きな溜息をついた後、平常時の表情に戻る彼。


「当たり前だろ。誰が予約したと思ってんだ。なぁ、樺地」


「ウッス」


よかった、思ったより単純で。

気付かれないように忍足先輩を睨むと、苦笑いで返された。

スープは滑らかだし、メインはシャトーブリアンだし。

本当に美味しいのだけれど。

男子テニス部員が食べるだけあって、量が多い。

ちょっと無理して食べてみたけど、デザートまではどう頑張っても入りそうにない。

/ 50ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp