第1章 〜人形のような少女〜
幸村副部長と越前君の試合はゲームカウント7-5。
途中から越前君が巻き返したけれど、幸村副部長が逆転を許さなかった。
結局、何のための試合だったのかよくわからないけど。
汗だくになった彼らにタオルとドリンクボトルを渡す。
「サンキュ」
「ありがとう」
ふわりと微笑む幸村副部長に一瞬目を奪われそうになって、軽く頭を降る。
昨日も思ったけれど、本当に性別が男なのかって疑う程綺麗な顔立ち。
この人は人形みたいって言われた事…無いのかな。
「ん?僕の顔に何か付いてる?」
「あ、いえ。綺麗だなって」
「あはは、有り難う。何か君に言われると照れるね」
「…言われ慣れてそうですけど」
「うん、まぁね」
そっか。
このあっさりした性格が、跳ね除けてしまうんだ。
周囲の妬みも羨望も、劣情も何もかも。
「良い性格してますね」
「嫌味か本音か読めない子だね」
「本音ですよ」
くすりと笑って交わすと、幸村副部長が目をぱちぱちと瞬かせる。
周りを見渡すと何故かしんとしていた。
「えっと…どうかしました?」
一番に戻ってきた越前君に腕を取られる。
「あんた危険。ほら、離れて」
「危険?何が…」
引き摺られるように竜崎先生のところに戻って来ると、やれやれと首を振られた。
「無意識程怖いもんは無いねぇ」
「わかってたんじゃないっすか?竜崎先生」
何処と無く責めるような越前君に、首を傾げる。
「…ん?」
なんの事かよく、分からない。