第1章 【青峰】合格祈願
その後、しばらくして青峰も、桃井に連れられてお参りに来ていた。
「もう、大ちゃん。なんかお願いないの?」
「ああ?ねーよ、んなもん」
お参りの順番が回ってきたのに、何もお願いしようとしない幼なじみに呆れた桃井は、そう声をかけた。
でも、返ってきたのは素っ気ない答え。
「もー!じゃあいいよ!ほら、どくよ!」
自分のお願いはもう済んでいた桃井は、青峰を引っ張って絵馬を貰いに行った。
「まだなんかやんのかよ」
「絵馬書くの!あとちょっとだから、我慢して!」
もう既に帰りたいモードの青峰を、桃井はなんとか宥める。
そして書き終わって飾りに行ったとき、なぜか突然青峰が止まった。
いきなりだったので反応できず、桃井は「ぶふっ!」と思いっきりぶつかってしまった。
「もう、なんで急に止まるの…」
「ヒサメの字だ」
青峰が見ている先には、一つの絵馬があった。
桃井にとっても、見知った少女の筆跡。
「わり、さつき。やっぱもっかい行ってくるわ」
「…うん、いってらっしゃい」
お参りの列に並びに走る青峰を見て、桃井はほっこりした気持ちになった。
「よかったね、大ちゃん。素敵な彼女に恵まれて」
青峰が見ていた絵馬には、
『高校も、それより先もずっと
大輝と一緒にいられますように!!
ヒサメ』
と書いてあった。
END