第1章 【青峰】合格祈願
『絶ッ対、大輝が桐皇に受かりますように!!』
パンパンと柏手を打って、深々と頭を下げる。
私、紗倉ヒサメは今日、恋人である青峰大輝の合格祈願に来ていた。
自分の合格祈願もそうだけど…やっぱり大輝の方が心配。
私も第一志望は桐皇だけど、油断さえしなければ大丈夫そうだから。
でも大輝の方は、勉強はからっきし。
スポーツ推薦だからたぶん、落ちることはないと思うけど…筆記の方とかでやらかしそうで、すごく心配。
当の本人が全然焦ってないのも、心配のもとだよ…。
だから今日はこうして、近くの神社にお参りに来たんだ。
地元では「ご利益がある」とちょっと有名なところ。
私のお願い、ちゃんと叶えてくれるかな?
『あ、絵馬だ!』
お参りも終わったし、帰ろうとしていたところで、絵馬を見つけた。
今年の干支の申のイラストが入ったちょっと可愛い絵馬。
『せっかくだし、書いていこうかな?』
お参り以外何もしないのも味気ないし、たまにはいいよね?
『うーん、なんて書こう…』
絵馬には自分のお願いも書きたいけど、やっぱり今一番のお願いは「大輝が桐皇に受かること」だなあ…。
もう、こんないい彼女を持って、大輝はもっと喜ぶべきだよ!
…でもやっぱり、素っ気なくてもなんでも、大輝のこと大好きなんだよね、私って。
『ずっと、一緒にいたいなあ』
無意識に、そう言っていた。
そっか、私の願いって、これなんだ。
私は自分のベタ惚れ具合に笑いながら、絵馬に願いを書いて飾った。