第9章 ❇︎3月 卒業したら終わりなんて言わせない【黒バス 青峰】
あれから、時は流れ。
私が、桐皇学園を卒業する日がきた。
青峰くんとの関係はあまり変わっていない。
あの後すぐに付き合う振りはやめるのかと思ったが、彼は他にも変な奴がお前を付け狙ってたら危ないからと継続を申し出てくれた。
それが嬉しい反面、振りから本物へ行くことはないと言われているようでショックも受けた。
そのままだらだらと、この関係を続けてきた。
休日にどこかへ行ったり、テスト前に青峰くんの勉強を見てあげたり。
それも、今日で終わり。
「青峰くん、今日もサボり?」
「…ちっ…悪いかよ」
「悪いよ。私の晴れ舞台、見てくれないと…」
「だから行きたくねぇんだよ」
その言葉に胸が温かくなる。
彼も私との別れを惜しんでくれてると分かるから。
それがどんな意味でも、私には嬉しい。
「青峰くん、今までありがとう」
「…んだよ急に」
「今日だから。ちゃんと言っておこうと思って」
あの日、彼が申し出をしてくれなかったらどうなっていただろう。
私が先輩に断るタイミングはずっと先のことになっていた。
私が彼に恋をすることはなかった。
そういった意味で、彼は私の救世主で、ヒーローだから。
私は彼に礼を述べなければならない。
…同時に、この想いに決別するためにも。
「やめろよ、これで終わりみてぇに」
「終わりでしょう?私が卒業してまでこんなことに付き合ってくれなくて良いよ」
私は大学に進学する。
一方の青峰くんはきっと将来プロのバスケット選手になるのだろう。
大学はアメリカ、なんてこともあるかもしれない。
そんな彼を、私はお茶の間で応援する立場になるのだから。
「卒業まで続けてくれて嬉しかったし、楽しかった。…だから、」
ありがとう。
さようなら。
続けようとした言葉は遮られる。
「終わりになんてさせねぇ」
腕を勢いよく引かれたと思うと、何かを考える暇もなく唇を塞がれたから。