第1章 ❇︎1月 初詣【テニスの王子様 跡部】
しかし跡部(帰りの車)を確保しなければわたしに明日はない。
なにせ上着を着ただけで携帯もなければ財布もないのだから。
「とりあえず、お前らも一緒に参ろうぜ!」
向日のその言葉をきっかけに歩き出す5人。
お参りを待つ列は思ったより短く、後ろに並んだものの順番はすぐきそうだった。
その最中、上着のポケットにかろうじて賽銭代はあることを確認して安堵する。
ふの横を見るとそこには案の定の光景があり、仕方なく口を挟んだ。
「景ちゃん…賽銭は小銭で良いんだよ」
「その呼び方やめろ。…大体、神に参るのにそんなケチ臭いこと言うんじゃねぇよ」
この人にはきっと5円=ご縁だからとか言っても通じない。
諭吉100枚くらい賽銭として貰えるなんてこの神社の神主はさぞ驚くことだろう。
「ワイらの番やな」
忍足らと共に賽銭を投げ入れ、作法通りに祈り始める。
イギリス育ちの跡部もこれを知っていたのは驚きだった。
聞けば以前氷帝テニス部メンバーと初詣に行った時に聞いたとか。
何やら真剣に祈っている彼を見てクスリと笑ってから私も目を閉じる。
あれだけ本気で何を祈っていたかは後で聞いてみよう。
“今年も跡部といれますように”
"今年もといれますように"
なぜだか、今年は良い年になる予感がした。