第6章 ❇︎2月 甘い香り【進撃の巨人 リヴァイ】
「へ?あ…」
いつもつけない香水をつけていることを指しているらしい。
花の香りだからかべたべたとした甘さのようで、兵長はやや顔をしかめながら問いかける。
そう、普段はこんなものつけないのだ。
ただ今日という日のために、花を摘み自作した香水。
甘い匂いのする花をわざわざ選んだのには理由がある。
「本来、バレンタインって甘いものを渡すんです。でもそんなもの用意できそうになかったので…せめて香りだけでも味わってもらおうかなと…」
思ったのだが失敗だったかもしれない。
私の答えを聞いた兵長は大げさなため息をつくと、呆れたように額に手を当て何か考え込んでいるのだ。
しまった、兵長の嫌いな香りだっただろうか。
「ご、ごめんなさい!私、すぐに落としてきます!!」
「待て」
とりあえずこの状態の兵長の部屋にこれ以上こんな香りを撒き散らすのは得策ではないと判断すると、部屋から逃げ出そうと試みる。
しかしそれは再び兵長の手によって阻まれた。
加えて今度はそのままベッドに押し倒されたのである。
「へ?…あ、あの、リヴァイ兵長?」
「勘違いするな、別にこの匂いに文句言ったわけじゃねぇ」
視界が彼で埋まるほどの距離まで顔を近づけられる。
今度は意図的に息を吹きかけられ、思わず体が震えた。
その反応を求めていたらしく満足げに口の端を上げた兵長は軽く私に口付けた。
「っ、?!」
「むしろどう味わってやろうか考えていたくらいだ」
思いがけない言葉に目を丸くする。
兵長は抵抗しない私の反応を了承と受け取ったらしく、するりと服の下から手を差し入れてきた。
「あっ…へ、兵長!」
「ちっ、さっきからエロい声出しやがって…」
「聞こえてたんですか…っ」
「あの距離で聞こえないわけがねぇ…何に悩んでんだか知らねぇが、んなこと忘れるくらい鳴かせてやるから覚悟しろ」
あぁ、やっぱりこの人にはお見通しだった。
私が何で悩んでいるかなんて彼には大したことないのだろう。
それならばいいのだ。
私はその程度の存在で構わない。
こうして彼と時折欲に溺れる女で構わない。
「兵長、愛しています…っ、」
返事はない。
ほんの少し愛撫が激しくなるだけ。
それこそが答えだと微笑むと、私は彼と共に甘い香りに酔いしれた。