第1章 ❇︎1月 初詣【テニスの王子様 跡部】
「あーん?あけおめじゃねぇの」
「え、あ…うん、明けましておめでとう」
“誰か助けて”
新年明けて最初に思ったことはそれだった。
1月1日0時00分になった瞬間我が家に響いたインターホン。
玄関の扉を開けてみればそこには跡部がスーツを完璧に着こなしていて。
日本人なら和服だろ、と突っ込みたかったが彼が扉を開いてすぐに私の手を引き外へと連れ出したためそれは叶わなかった。
あけおめ、ことよろなんて略語をこの人が使うとはあまりに予想外すぎて言葉がでない。
こちらが黙っているのを了承と受け取ったのか跡部はさっさとリムジンに乗り込んだ。
「なんで私は上着を着て扉を開けたんだろう…」
後悔しても遅いがついそう呟いてしまう。
上着さえ着てなければそれを持ってくる猶予を与えられたに違いない。
その間に状況を把握し、場合によっては樺地なり警察なりを呼ぶことは可能だったはずだ。
さすがに新年だからか跡部の側にいない彼を今は恋しく思いながら、リムジンの窓から空を見上げる。
1つの大きな星が、なぜだかやけに輝いてみえた。