第3章 ❇︎1月 絵馬【黒子のバスケ 青峰】
吐く息は白くて、手がかじかむ。
冷たくて思うように動かない手をポケットに突っ込んで、青峰大輝は人だかりの中を歩いていた。
「ちっ、んで俺がこんなとこに…」
彼がいるのは自宅近くにある神社。
初詣に行こうと幼馴染みである桃井に連れ出されたのである。
ちなみに、その肝心の桃井は、先程黒子と偶然会ったことで彼の方に行ってしまった。
取り残されたことを幸いとして帰ろうかとも思ったが、何もしないで帰るのも何だかすっきりしない。
せめてお参り位はして帰るかと神社の奥へと足を進めているわけなのだが、
「うぜぇ…」
そう、兎にも角にも人が多いのである。
日付が新たな年に変わった瞬間家を出て来たのだが、似たような時刻に参拝しに来た人が他にもたくさんいたのだろう。
様々な人が混じり合って、それほど広く作られていない道はゴッタ返していた。
「っ、悪りぃ」
「あ、ごめんなさいっ!」
ぶつかるのも当然だ。
普段なら気にせず進むものの、青峰は足を止めて振り返った。
すでにぶつかった人物は人混みに紛れて居ない。
気のせいかと思いつつも、青峰の心は乱れた。
「…?」
ぶつかった相手が、想い人に似ていたから。