第8章 傷
大分前の…?
どういうこと…?
クイッと母さんの袖を引いて聞いた
虹「まえのきずって…?」
…聞かなければよかったのにな
深すぎる闇に近づいた気分だった
虹母「…あのね、この子の怪我はね…今した怪我じゃなくて大分前に、怪我してるの」
俺の母さんは凛が…
DVを受けていたことに気がついたんだ
俺は、そんなこと知らなかったし分からなかった。
…けど。
聞いちゃいけなかったんだ
今となっては後悔ばかりだ…
虹「なんでむかしのきずがあるの?」
虹母「こらっ!!!」
初めて怒鳴られたけど、気になることはしょうがない
それに…聞いてしまったから
『…あのね、わたしがいけないこなんだって。おとうさんはね、かわいいっていってくれるけど…おかあさんはわたしなんかいらないんだって。…たぶんおとうさんもなにもいわないから、わたしはだめなこなんだよ。』
…いけない子、ダメな子
幼い子供に言うことではない。
けれど…“白音”はそれを許す
大きい家程過酷な道を歩まされる
幼いながらに凛はそれを分かってた
俺に出来ることはない、と思ってた
…1つだけ、思い浮かんだ事。
虹「凛ちゃんはいらなくないよ!ぼく、凛ちゃんたいせつだもん!…そうだ!これ!」
俺はバスケットボールを渡した
『バスケットボール…?』
虹「そう、ばすけ!たのしいんだぞ!いっしょにしよう!」
『…うん!』
これが俺が知る凛のバスケとの出会い
まさか、続けてくれてるとは…
凛は毎日傷だらけだった
でも、俺があげたパーカーを着て、バスケをしてた
凛が上手くなるのは早かった
俺も抜かされそうになってた
年上よ意地で負けなかったけど…その時はな
俺は…凛とバスケをするのが楽しくて、大事なことを忘れてたんだ
もし、分かっていたなら、覚えていたなら。
救えたかもしれないのに。
凛が消えてしまう、その前に
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大分、前のことを思い出したな…
俺は今度こそ、救うんだ