第13章 赤葦とバレンタイン
駅の構内についた。
こんなに人であふれていても、 すいれんをすぐに見つけられる。いちばんに、見つけてしまう。
彼女の周りが 光って見える。
ほら、
『京くん!』
来た。
きょうのあいつは、タイトスカート。
ほっそりした脚、やっぱりヒール履いてる。
すいれんは、階段をぴょんと跳ねて下りきって、胸にとびこんできた。
「ハッピーバレンタイン」
『わたしのセリフ、奪わないの〜〜』
歩きながら、彼女の手にあった小さな袋を握らされた。
ありがとう、小さく伝えたら、 すいれんは 控えめに肩を寄せてきた。
「ヨーロッパでは、男性から女性にプレゼント渡すからね」
『そうなんだ』
じゃあ、きょう わたしたちの周りだけ ヨーロッパなのかしら?
と彼女は いじわるに言った。
そうだよ。
すいれんに喜んでほしくて、いろいろ考えたから。
「さ、行くよ」
『どこ?』
「ないしょー」
いつも もらってるやさしさと、愛情と、大切にしてくれる気持ち、少しでも返したい。
おかえしするのに、一ヶ月も待てないよ。