第11章 赤葦とカフェ席
「 ねえ、」
「ん?」
「このモンブランは?」
「京くん好きかなって」
「とか言いつつ すいれんが食べたいだけでしょ」
「うん」
そのとおりです さすがです彼氏さま。
「ところで、席変えたの?」
「うん。ソファのほうが、いいとおもって」
「なるほど、ところで」
言いかけて、緊張してるのがわかった。
なにかやましいことがあるとか、そんなことおもってないけど、胸がチクチクする。
「さっきの おねえさん、どうしたの?」
「ああ あれ?」
「うん」
「ソファ席が空いてるのを見つけたから、そっちに荷物を移動させてるとき、席 探してたみたいだし、ちょうど後ろ向いてたから、声かけて 譲っただけだよ」
「なるほど」
ここ、良ければどうぞ、という京くんの声があたまのなかに響いた。
そんなこと言わなくても、彼女たちは そのうち時間をかけてでも、どこかの席をとって 座っただろう。
ただ、確かにそうだけれど、京くんは声をかけた。
どういう気持ちで声をかけたかは わからないけれど、
そういうことのできるひとなんだなと、おもった。
「さすが京くんだね」
「なにが?」
「やさしいってことだよ。」
「そうかな」
そのあと京くんはモンブランを半分くれた。
スーパーやさしかった。
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やさしいひとになろう。