第10章 赤葦と歩幅
お互いがお互いを好きで、それがわかってるような、わからないような、あと1ミリのときがあった。
「あ、かわいい」
「うん?」
すいれんが目で示すほうに に目を向けるために、かがんで目線を合わせる。(そうしたら彼女はうろたえてた)
彼女の目線のさきには2、3歳の子どもの姿があった。
「ほんとだ、かわいいね」
「京くん 子ども好き?」
「好きだよ」
「うん、そんな感じした」
いいパパになりそうだもん。そう言って かかんだ俺のほうを見て ふふっと笑った。
お天気がいいから、街の図書館に歩いて出かけて、 すいれんのお気に入りのカフェでランチ。
そのまま すいれんの買い物に付き合い、帰路についたところだった。
すいれんはどうやら、俺に選んでもらいたいらしく、衣類を買いに行くときは必ず連れてかれる。
連行だ。(どれだけ前日疲れていても、前日激しく身体を重ねても、GOだ)
なんでも、「京くんにときめいてもらいたいから、京くんがときめいてくれる服を買うの!」という理由らしい。
そんなの、 すいれんが着たら ぜんぶ ときめくし、(脱がしても ときめくし、ていうかムラムラするし)
あぁでも そんなこと言ったら 木兎さんに すいれんが惚気るかもしれないから、内緒。
「太平洋側のおそらだねー」
「そうだね」
てくてく、てくてく。アパートまでの道のりは、人が多く、とてもにぎやかだ。