第8章 赤葦とほろよい【裏】
すいれんは、のんだあと 捕まると、本当に厄介。
厄介だけど、(かなり)カワイイ。
「 すいれんちゃーん」
「はーあーいー?」
「きょうもかわいいね」(棒読み)
あたまをよしよしと撫でると、もっともっととねだってくる。
そのまま すいれんに右手をとられて、ほっぺですりすりされた。
手のひらには すいれんの頬の感触、手の甲は すいれんの手の感触があって、気分がいい。
すいれんは木兎さんと飲みに行ってて、途中で合流して、連れて帰ってきた。
すぐ寝るのかと思いきや、案外寝ない。
ベッドに乗って、壁にもたれて テレビを見ていたら、
膝に上半身を乗せてきて、かまって、かまって、と一点張り。
仕方ないから、名前を呼んで撫でるだけの簡単な仕事をこなしてる。
「ねえ けいちゃん」
「」
無視。
「…けいくん」
「ん」
「お風呂入りたい」
「はいはい」
すいれんのあたまをぽすっと軽く叩いて、ベッドから降りた。
すると、背後霊の感覚がした。
いや、 すいれんである。
ぴたっと身体をくっつけて、大きい身長差に耐えつつ おなかに手を回している。
俺が左足を踏み出せば、 すいれんも左足を動かし、その右も同様。
「寒いでしょ、ベッドにいたら」
「いやー」
「すぐもどるから」
「いーやーあー」
仕方ないから すいれん背後霊を後ろに抱えたまま、給湯をはじめるボタンを押す。
ピロン、という音がした。
(なぜか後ろからも、ぴろん、と声が聞こえた)
「はーい すいれんもどるよー」
「いちに、いちに」
「……イチニ、イチニ」